我々は日常特に意識することなく「は」と「が」の使い分けを行っています。しかしこの「は」と「が」の使い分けは、いざそのすべてを説明するとなると専門家の間でも議論となるような複雑な問題をはらんでいます。とはいえ、基本的な使い方はさほど難しいものではありません。ここでは細かい問題には言及せずに、「は」と「が」のもっとも基本的な違いを見ることにします。
文には大きく分けて、名詞を述語とした「名詞文」、形容詞(イ形容詞)や形容動詞(ナ形容詞)を述語とした「形容詞文」および動詞を述語とした「動詞文」があります。具体的には次の通りです。
佐藤さんは社長だ。(名詞文)
佐藤さんはやさしい。(形容詞文)
佐藤さんが来た。(動詞文)
さて、これらの文ではいずれも主語が「佐藤さん」ですが、名詞文と形容詞文は主語が「は」で示されているのに対し、動詞文では主語が「が」で示されていることに気が付きます。このように、通常「は」は名詞文および形容詞文の主語を提示し、「が」は動詞文の主語を提示するという違いがあります。
また先の例は「は」と「が」を入れ替えることも出来ますが、その場合は解釈が異なり、特別な意味を持つようになってきます。
佐藤さんが社長だ。(名詞文)
佐藤さんがやさしい。(形容詞文)
佐藤さんは来た。(動詞文)
名詞文や形容詞文の主語に「が」を付けると、「社長なのは誰ですか?」、「やさしいのはどの人ですか?」といった疑問への答えや、「他のどの人でもなく佐藤さんこそ」が「社長」であったり「やさしい」という解釈になります。つまりこの場合は他の人物を排除して、ある人物を特定するような解釈となります。一方、動詞文の主語に「は」をつけた場合「他の人は来なかったが、佐藤さんは来た」のように他の人物を排除するような解釈となります。
ここで挙げた例は「は」と「が」の使い分けの一部であり、また使われる場面によって例外もありますが、ここでの違いは以下のようにまとめられます。
1)通常は、名詞文・形容詞文の主語は「は」、動詞文の主語は「が」で示す。
2)名詞文・形容詞文の主語を「が」、動詞文の主語を「は」で示すと、他を排除して該当者を特定するような解釈となる。